2019年7月23日(火) 1019回目
<ご先祖様が守ってくれている>
致知2019年2号(致知出版社)
「最高の味を求め続けて」より抜粋
杜氏 農口尚彦氏
「酒造りの神様」「伝説の杜氏」と称される野口尚彦氏、86歳。16歳で修行に入り、この道一筋70年になる現代の名工だ。全国新酒鑑評会で連続12回を含め、計27回の金賞受賞歴を誇り、その味を求めるファンは後を絶たない。農口氏はいかにして腕を磨き高めてきたのか。酒造りを通じて掴んだ成功の法則とは何か。いまも飽くなき挑戦を続ける活力の源泉を交えつつ、語っていただいた。
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祖父の存在も非常に大きいと思います。祖父は私が2歳の時に亡くなったので、顔も覚えていません。けれども、祖母からよくこういう話を聞かされたんです。
私の母は8人の子供を産みましたが、上の6人は難産で生まれてすぐに亡くなった。2人が生き残って、それが5つ上の姉と私。最後の最後で家の跡継ぎができたものですから、祖父はものすごく喜んでおったと。その祖父の思いを私は事あるごとに感じるんです。22歳の時から杜氏資格試験で毎年トップを取ったのも、杜氏になって6年目に一級酒造技能士試験を受け一位に表彰されたのも、きっと祖父が後ろで私をちゃんと見守ってくれたからだと思っています。
もちろん猛勉強をしたこともありますけど、祖父が見守ってくれていると思うと、不思議と自信や力が湧いてくるんです。
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父は、「天国から親父と一緒に見ているからな!」と言って亡くなりました。
私は会社を創業するような度胸もありませんし、資質もないように思っていたんですが、父から事業を引き継いでおります。そのように考えると運命を感じるんです。
祖父は、近衛兵第一連隊に所属、祖母の父は、二宮尊徳氏の報徳の思想を広げられた松島十湖氏の高弟であったことを知り、自分の使命と役割をますます感じたんです。
厳しい経営状況から奇跡的ともいえる事が何度も起きて会社再生への道を歩んでこれたのは、きっとご先祖様が守ってくれているんだと思えたんです。だから、何をするにしてもご先祖様に恥じないように生きていこうと思っています。