2023年1月6日(木) 1063回
<幸せも不幸せも自分の思い次第で決まる>
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真実の自分の声をいうことに関して、最近このような出会いがありました。四十代のサラリーマンが私を訪ねてきて、ある悩みを打ち明けられたのです。「自分は仕事は好きだけれども、耐えられないことが一つある。とても強くて厳しい女性がいて、その人といるとエネルギーを吸い取られてしまう気がする。会社に行くのが憂鬱で、このままだと病気になってしまうかもしれない。どうしたらいいでしょうか」という相談です。
私は男性の話を聞き終わった後、「その女性のもとで働くことで、どんないいことがありますか」と質問しました。
「何もありません」
「では、もし彼女があなたの理想とする上司だったらどうでしょうか」
「優しくて思いやりがあり、自分の言うこともよく理解し応援してくれると思います」
私はさらに質問を続けました。
「もし、彼女がそういう上司になったら、あなたにとってマイナスのことは何ですか」
しばらくすると、それまでしょげていた彼の表情が変わっていくのが分かりました。ピンと背筋を伸ばし、こう言ったのです。
「ああ、そうですよね。上司がそうなったら私は上司の善意に甘えてろくに仕事をしなくなるかもしれません。責任をもたなくなるかもしれません。
そこまで言った後、「分かりました。これで解決しました」と言ってお礼を述べ、晴れやかな顔で帰っていったのです。私は男性に何かをアドバイスをしたわけではありません。男性は自分の中にある答えを自分で引き出しました。真実の自分の声を聞くとは、そういうことではないかと思います。私たちは自分に都合のよい出来事が起きればそれを善と捉え、都合の悪い出来事が起きれば悪と捉えます。しかし、一見マイナスと思える出来事の裏にはプラスの要素が同じ量だけ隠れています。逆もまた然りです。男性もマイナスと思える出来事の中にある隠れたプラスの部分に気づき、それがいかに自分にとって大切なものであるかを悟ったのです。
致知2022年11月号より引用
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仕事は楽じゃありませんし、大変なことが多いです。そして、人間関係の悩みも多いものです。会社を辞める理由の多くは人間関係であるわけです。私たちは、たくさんの悩みを抱えています。一つひとつの悩みの根っこを辿っていけば、人間関係ではないかと思うのです。だから、よい人間関係をつくることができれば、人生が楽しく、幸せな人生を歩んで行けると思うのです。ところが、会社の中で嫌いな人がいると、避けたり、言い合いになったりして、わざわざ自分で悩みを増やしていくという自業自得の行動をとってしまいます。
自分は正しいことを主張していると思っているわけですが、相手も同様に自分が正しいと思っているわけだから、どちらかが歩み寄って相手を受け入れなければ、良い人間関係を築いていくことはできません。避けたり、遠ざけたりしても問題の解決にはなりません。つまり、いまこの人間関係の課題のステージをクリアしなければ、今回と同様な不都合な人が次から次へとあなたの目の前に現れてくるというわけです。問題解決の近道は、相手を受け入れること。これしかありません。これが、よい人間関係をつくっていくための最大の方策なのです。
相手が自分にとって、「嫌だなぁ!」と思えたとき、自分の器を磨いてくれる、砥石だと思えば有難い存在となるわけです。そのように考えると受け入れやすくなりますね。そうなると、顔つきが穏やかになって、笑顔が溢れ、よい事しか起きなくなってくるわけです。だって、自分のとって不都合なことは、自分の心を磨いてくれる砥石だから、不都合なことも、一瞬によい出来事になっちゃうわけです。有難いですね。つまり、幸せも不幸せも自分の思い次第で決まるということです。
致知2月号「仏道の原点因果応報の真理に学ぶ」の中で、人から「バカ野郎!」と言われても、「そうか、この人から見ると俺はバカなのか」と笑っていられるくらいになれば大したもの、と書かれています。そのような器の大きい人間になりたいですね。