2020年6月7日(日) 1040回
<あなたの仕事は何ですか?>
すべては今のためにあったこと(海竜社) より抜粋 その1
修養団 元伊勢道場長 中山靖雄氏著
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昔、中国へ講演に行った時のことです。その時、日本語が話せる中国人の講師の先生がこういうお話をされました。
その先生は六百人の青年の前で、「あなたの仕事はなんですか?」と聞きました。そしたら前に座っていた方が、「水道の配管工事をやっています」と答えました。
すると先生は、
「それは仕事の種類でしょう? あなたの仕事はなんですか?」
とさらに聞かれたのです。
「いや、水道関係の仕事をしています」
「それは職種でしょう? あなたの仕事は何ですか?」
私も「修養団という社会教育団体で、青少年教育の活動をやっております」と、答えると思うのですよ。
しかし、この中国人の先生は青年に向かって、
「『人のお役に立つことをやっています』。これがあなたの仕事でしょう? 『それは何を通じてですか?』と言われてはじめて、『水道の配管工事を通じてです』となる。これが本当ではありませんか?」
と言われたのです。水道の配管工として人々のお役にたっていると心から思えた時、仕事に対する思いが変わってきます。この職業は自分の役割としてやらせてもらっていると、気づくことが大事だということなのです。
すべての仕事が尊くて、ありがたい、いい仕事なのです。まずは、人の役に立つことを心に置いて、自らの役割をそれぞれがやること。ここのところが非常に大事です。
「あなたの仕事は何ですか?」と聞かれた時、「水道の配管工事です」と答えると、うまい水道の配管工さん、下手な水道の配管工さんというのが出てくるし、儲かっている、儲かっていないという良し悪しの比較の世界になってしまう。
「あなたの仕事は何ですか?」
「人のお役に立つことです」となると、どんな職業も有難いものになるのです。
たとえば、教師をされているなら、
「私の仕事は人のお役に立つことです。それは小学校の教師を通じてです」となります。すると、難しい子どもが来た時も、この子によって、大きなお役に立つことをやらせていただけるのだな、という思いになる。
こういうことがきちんと腹に収まった時に、さまざまな出会いが自分を生かしてくれるのだということにも気がつけるのです。
昔はそれぞれが自分のできることで「はたを楽にする」という考えがありました。それが「傍(はた)」を「楽(らく)」にする、「はたらく=働く」ことだったのです。
「私はみんなのために、みんなは私のために」という世界が本当なのです。
どんな仕事もこう言いきれたら、仕事への視点が変わってきますね。
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仕事は生活の糧である。これは至極当たり前のことであるが、お金のためだけになると金の切れ目が縁の切れ目となっていくでしょう。
仕事は社会から必要とされているから存在しています。だからお客様に喜んでいただく仕事を追求すればするほど社会貢献度を高めていくものと考えます。
社会貢献というのは、ボランティアや仕事以外のことを考えてしまいますが、目の前の仕事を通じてできるのです。自分の仕事で「人のお役に立つんだ」、という意志があれば、仕事への姿勢が大きく変わっていくものと思います。