2022年8月29日(月) 1057回
<かけがえのない命を生きる>
『夢の卵の孵し方・育てかた』仲田勝久著、致知出版社より
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広島市の女子高校生のA子さんは、小児マヒが原因で足が悪い女の子でした。A子さんが通う高校では、毎年7月のプール解禁日に、クラス対抗百メートル水泳リレー大会をしています。男女2名ずつがそれぞれ25メートル泳ぐ競技です。A子さんのクラスでこの大会の出場選手を決めていた時、女子1名がどうしても決まりませんでした。
早く帰りたいクラスのボスは「A子はこの3年間、体育祭、水泳大会に1度も出ていない。最後の3年目なんだから、お前が参加しろ」といじわるなことを言い出しました。A子さんは誰かが味方すると思ったけれど、女子生徒は何か言えば自分が泳がされると思い、みんな口をつぐんでいます。男子生徒もボスのグループに憎まれたくないから、何も言いませんでした。そして、結局泳げないA子さんが選手になったのです。
彼女は家に帰り、お母さんに泣きながら訴えました。するとお母さんは「お前は来春就職して、その会社で何かできない仕事を言われたら、また泣いて私に相談するの?そしてお母さんがそのたびに会社に行って、うちの子にこんな仕事をさせないでくださいって言いに行くの?」そう言ってすごく怒り、A子さんを突き放しました。A子さんは部屋で泣きはらし、25メートルを歩いて渡る決心をし、そのことをお母さんに告げに行きました。するとお母さんは仏間で「A子を強い子に育ててください」と、必死に仏壇に向かって祈っていました。
水泳大会の日、水中を歩くA子さんを見て、まわりから笑い声やひやかしの声が響きました。彼女がやっとプールの中ほどまで進んだその時、1人の男の人が背広を着たままでプールに飛び込み、A子さんの隣のコースを一緒に歩き始めたのです。高校の校長先生でした。「何分かかってもいい、先生が一緒に歩いてあげるから、ゴールまで歩きなさい。恥ずかしいことじゃない、自分の足で歩きなさい」そういって励ましてくれたのです。
一瞬にしてひやかしや笑い声は消え、みんなが声を出して彼女を応援し始めました。長い時間をかけて彼女が25メートルを歩き終わった時、友達も先生も、そしてあのボスのグループもみんな泣いていました。 読売新聞社記者、大谷昭宏氏の話
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A子さんは、意を決して自分が出来ることを必死に実行しました。周りの冷ややかな嘲笑の中でも立派に歩いたのです。お母さんの思いには真の親の愛情を感じます。
自分の娘が社会で仕事をしていう上で、たくさんの壁を乗り越えていかなければなりません。その時に、体が不自由だから「できない」と言って逃げていては、問題の解決になりません。その壁を乗り越えてこそ、娘に生きる強さ、生きる希望が身についていくのだという強い信念を感じます。また、校長先生の思いには涙をさそいます。
人には能力の差があるものです。できないからと言ってあざ笑うのは、人間として恥ずべき行動です。
この記事を読んで気づいたことは、「やろう」と決心する意志です。気持ちはあっても行動しなければ、何も変わりません。大げさかもしれませんが人生も同じです。自分が主人公となって実践してこそ道が開かれるわけです。仕事では働く仲間を思いやり、「一緒にやろう!」という思いが強いチームとなっていきます。自分がやりたいとか、やりたくないとかではなく、チームという組織の一員として、共に成長していく意志こそ、働いがいにつながっていくと思います。