2020年3月1日(日) 1030回
<家族との会話>
子育てのこころ(禅文化研究所)
盛永 宋興氏著(元花園大学学長、大珠院先住職)より抜粋 その2
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NHKで知った少し前のデータですが、日本とアメリカとイギリスと、この三か国で勉強部屋を持っている子どものパーセンテージを調べたことがあるそうです。そのとき、イギリスの社会では51%、アメリカでは59%、そして兎小屋といわれるほど住宅事情の悪い日本で、なんと76%の子どもが個室を持っているという結果がでたのです。
けれども、公共の場所で席を譲る子どものパーセンテージを調べたら、これを正反対で個室をいちばん持たないイギリスの子どもが64%、アメリカでは48%、日本では17%であった。これをどう考えますか。
ただでさえ核家族化して、そして兄弟の数が少なくなって、親子3人とか4人とかでしか暮らせない。そういう子どもが、さらに個室でひとりで暮らす。この子が社会性を失っていくのは当然です。その結果、どうやって人間とつき合っていくのか、他人とのコミュニケーションをどうやってつくるのかということが、まったくわからない子どもに育ってしまうわけです。
ですから、人に席を譲らないとか、礼儀を知らないとか、あるいは思いやりがないとかいうふうに大人はいいますが、実はそうではなくて、この子どもは可哀想に社会性を失っているのです。人と人とのコミュニケーションのつくりかたが、まったくわからなくなっているのです。
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昭和1桁生まれの父親の兄弟は7人、母親の兄弟は9人。そこに両親がいて祖父母がいれば、一家で10人を超える大家族で暮らしていくわけです。その生活の中において、兄弟で小さな弟妹の面倒は見るのは当たり前のこと。そして、両親のお手伝いをして各々が役割を担っていくのです。最小単位の家族という組織の中で社会性を養っていたんですね。
現代では、祖父母とは別居して核家族化、母親も仕事。子どもとのコミュニケーションが少なくなってきています。まずは、親達はその現実をしっかりと認識して、家族が会話をするような環境づくりをしていくことが重要となってきます。
例えば、夕食の時は、テレビをつけないで会話をしながら食事を楽しむこと。これは、とても重要なことではないだろうか。
親の背中を子どもが見ています。人への思いやりの行動を常に心がけでいくこと、まさに、子は親の鏡であるということなのでしょう。