2020年5月7日(木) 1036回
<人を育てる>
小さな人生論(致知出版社) より抜粋 その2
藤尾秀昭著
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老人が松の苗を植えていた。通りがかった君主が老人に年齢を尋ねた。
「八十五になります」
君主は笑った。「その松が立派な木材になっても、自分では使えないだろうに」と。
八十五翁は言った。
「国を治めている人のお言葉とは思えませぬ。私は自分のためではなく、子孫のために植えているのです」
君主は恥じ入るほかはなかった。
江戸時代の儒学者・太宰春台の『産語』にある話である。
人を育てるのもまた、かくの如しだろう。一人ひとりを丁寧に教育し、根づかせ、成長をうながす。だが、そうして育てた人たちが担う時代の豊かさを、先人が享受することはない。
それでも人を育て続けなければならない。それは命を受け継いで後から来る者に対する、先行する者の不可欠な責務なのだ。
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命は子々孫々と受け継がれ今がある。そのことに思いに至れば、命という時間も疎かにはできないのです。
アイデックスは今年で満65年となります。多くの諸先輩方の働きでここまで来れたものと感謝の念に堪えません。
企業が100年を迎えるために最も大切なことは、「人づくり」に尽きると考えるのです。しかしこれが難題なのです。教育というものは、川に墨で字を書くようなものであると教えられました。それでも情熱をもって伝えていきたいのです。