2020年8月13日(木) 1045回
<地味な努力>
働き方(三笠書房) より抜粋
稲盛和夫氏著
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かつて京セラの滋賀県にある工場に、一人の中学卒の従業員がいました。
「これはこうしなさい」と教えると、「はい」とうなずいて、手を真っ黒にし、額を汗まみれにしながら、言われた仕事を来る日も来る日も飽きずにやっていたものです。
工場の中ではまったく目立ちませんでした。ただ不平や泣き言は一切口にせず、地味で単純な作業をコツコツと続けていたのです。
それから二十年後―――私は彼に再開しました。
驚いたことに、地味で単純な作業をコツコツ続けていた彼が、事業部長に出世していたのです。私が驚いたのはその役職だけではありません。「よくぞ、ここまで」と思わず声を出してしまうほど、人格も見識も十分に備えた立派なリーダーに成長していたのです。
ごく目立たない存在でしかなかった、ただコツコツと愚直に仕事を続けるしかなかった、平凡な彼を非凡に変えたもの―――それこそが地味な努力を厭(いと)わずに積み重ね、息長く続ける「継続する力」だったのです。
まさにトーマス・エジソンが言う通り、成功の要因に「ひらめき」や「才能」(インスピレーション)が占める割合はたった1パーセントにすぎず、残りの99パーセントは「地道な努力」や「汗をかくこと」(パースピレーション)によるものです。
一つのことにあせらず、腐らず、打ち込み。そして何があろうとも屈せずに続けること。それが、人間をしっかりとつくり上げ、さらには人生を実りあるものにしてくれるのです。
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地味な努力を続けていく過程では、「こんなことをしてなんになるのか!」、「誰も評価してくれないじゃないか!」という悪魔がささやき、努力が虚しく諦めとなり、継続が止まる。継続の先に手にしたいものが見えれば続けられるのだが、そうではないのです。
地味な努力というのは、遠い彼方にある目標をしっかりと捉え、自分を信じていくしかないように思うのです。時には迷います。そんな時こそ、目標を見て自分を鼓舞していく。それが自分を磨き、強い人間にしていくように思うのです。