２０２３年１月２日（月）　１０５９回

 ＜孝経を読む：その２＞

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　老人ホームは随分設備も整って、よく世話もしてくれます。僕も入りたいなと思うところもあるけれども、ここを考えるべきときがきていると思うんです。年をとったら老人ホームに入れて、後の面倒を国のほうへ任せてしまう、というのがどうなのかね。
　親の面倒を見るのは嫌だけど、犬の世話はしているんですよ。犬の散歩をさせて、犬の糞を大事に集めとるのに、親の下を取るのは嫌がるばかりか、人に任せている。それが当たり前のようになりかけているところに問題があるんです。
　孝行にはこれでいいという終始はない。しかし、そのように孝行をつくして、十分にできていないことを心配する者は非常に少ない。

　「もうこれだけ尽くしたからいいだろう」とね。まあ親のほうが年を取っておりますし、親から先に死んでいくのが順序ではありますから、親に対するのはわが子に対するのと違って、そこに限界がある。病気をして、あの医者にもこの医者にもみせたけど、これはもうやむを得んといって諦める。そこがわが子に対するのとちょっと違うんですね。わが子のことにおいては、親は諦めるなんてことはほとんどないと思います。自分の親に対してはそういう面がある。

　親が病気になれば、心から心配をして、なんとか一日でも早く回復するように、あらん限りの力を尽くして接する。これはいまの方たちも必ずしも親の病気を放っておくわけではないでしょう。しかし、この「憂いを致す」ということが、我が子が病気をしたときと同じように親の病気を心配するかというと、そうでない場合がある。

　私も子供を育ててきましたし親にも仕えてきましたけれど、振り返ってみると、親の場合は、あっちの医者にもこっちの医者にもみせたけれども、助からないといわれたときに、親も年を取っとるし順番かなあという、一面諦めのような気持ちがありました。けれども、我が子の場合には絶対に諦めませんよ、これはね。

　大阪に“でんぼの神さん”として知られ、「石切り」さんと呼ばれて親しまれている神社があります（石切劔箭神社：いしきりつるぎやじんじゃ）。この神社はなかなか信仰が厚く、いつ行ってもたくさんの人がお百度参りをしています。寒いときでも裸足になって、お百度を踏んでおられる。これらの人々は現代の進んだ医学でもどうも治らんといわれて、困ったときの神頼みというのでお百度参りをしておるんです。最後の最後まで、なんとかして助けなければいかんと。これが親が子に対する気持ちだと思いますね。

　私も子供を失いましたし、父も母も失いました。この両者を比べてみると、親に対するものと、子に対したときとでは、やはり違いますね。だから、我が子に対するような気持ちで親に対するというのは、本当の孝行であるかもわかりません。

「孝経　人生をひらく心得」　伊與田 覺著（致知出版社）　

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　８月２６日にコロナに罹ってしまったんです。幸いに一日で熱は引きましたが、コロナに感染したことを母親は大そう心配しているんです。「大丈夫だよ！」と言っているんですが、何度も電話がかかってきます。それで、後から分かったことなんですが、母親からの電話に気づかずにいて、折り返しの電話がないので母親は、「息子が重篤になってしまったかもしれない」と大そう心配していたようなのです。着信に気づいて折り返しの電話をすると、「安心した」との言葉が返ってきます。
　僕からすると母親は８８歳で息子のことの心配よりも自分の体のことを心配して欲しいのですが、母親からすれば我が子なんです。この話にもありますように、お百度する母の気持ちなんですね。
　心配してくれているお母さんに心配かけないようにしないといけません。コロナになって２週間は、母親孝行のために実家には行けませんが、息子が変わりにおばあちゃんの所に行って買い物を付き合ってくれています。案外、嬉しそうに電話がきます。
　母親が元気でいられるように、これからも毎週の母親孝行を楽しみに通っていきたいと思います。子供の元気な姿を見せることが一番の親孝行のように思えています。