2023年1月4日(水) 1061回
<孝経を読む:その4>
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親不孝ほど大きな罪はない。
「子曰(しのたわく)わく、五刑(ごけい)の属(ぞく)三千(さんぜん)」」。中国の法律に五刑というものがあり、それを施行していく上において付属するものが三千ある、と孔子がおっしゃった。
中国というところは刑罰の面で昔からずいぶんと厳しかった。この五刑の第一は墨(ぼく)といって、罪人の額に入れ墨をする。これを墨刑(ぼっけい)という。」
第二に、劓刑(ぎけい)といって、鼻を削ぎ取る。
第三に、剕刑(ひけい)といって、足の筋肉を斬(き)って歩けないようにする。
第四に、宮刑(きゅうけい)といって、男だったら男根を切りとる。もう子供が生まれないように去勢するんですね。女の場合は、小さな一室に閉じ込めて外に出さない。こういうのを宮という。それから最後に大辟(だいへき)というのがある。これが一番重い刑で、死刑にする。
こういうふうに五つの刑罰というものがあって、これを施行するにあたって、細かく規則をつくっていました。どういうときには墨刑(ぼっけい)に処するとか死刑に処するとかいったことを決めていた。そうした刑に対する属が三千あったというのです。そのうちの千は墨刑(ぼっけい)についてのもの、同じく千は劓刑(ぎけい)についてのもの、剕刑(ひけい)が五百、宮刑が三百、それから大辟(だいへき)が二百というふうに項目が実に細かく規定されていた。二千四、五百年前の話にすでにこういう法律が整備されていたんですね。
「而(しこう)して罪(つみ)不幸(ふこう)より大なるは莫(な)し」。しかし、そうした罪の中でも不孝(親不孝)をなすより大きな罪はない。
「此(これ)大乱(たいらん)の道なり」。これが世の中を乱す根源になる。中でも親不孝はすべての乱の根本になる。だから、親に対する罪はもっとも大きいと言っているわけです。
「孝経 人生をひらく心得」 伊與田 覺著(致知出版社)
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親孝行というのは、全ての良い人間関係の根本を成していくということだと思います。
私には5つ上の兄がおります。兄の家は山梨県にありますので、なかなか帰省することも難しい面があります。その兄から電話がありました。「啓之君、お母さんのところに僕はなかなか行けないけど、行ってくれてありがとう!」って言うのです。仲の悪い兄弟でしたら、「お前も母さんの面倒をみろよ!」というところでしょうが、私は、毎週、母親の所に行って、お母さんと一緒に過ごす時間が嬉しいんだよ。動くことも大変になってきているお母さんの体の支え、心の支えになれることに心底喜びを感じるんだよね、と兄に言うんです。
若い時には、母親の有難味を感じることが出来ませんでした。父親が亡くなり50代後半になってから、息子のことを心配してくれる母に心から感謝の気持ちなんです。いずれ別れがくるでしょうから、その時まで、毎週、母のもとに通って、母と会話をし、母と一緒に手を繋いで買い物に行き、時には「あれ、買ってよ!」とわがままを言ったり、母のお手伝いをしたりして、母の喜びを我が喜びとして親孝行をさせてもらいたいと思っているのです。