2016年12月7日(水) 812/1000
<生きやすい人生>
皆さんおはようございます。
「二度とこない人生だから今日一日は笑顔でいよう」生きるための禅の心 その2
PHP研究所
臨済宗円覚寺派管長 横田南嶺氏
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怒りや憎しみが湧いてきた時、それを消すのは容易なことではありません。お釈迦様は、「憎しみに対しては慈愛の心で接しなければ、憎い気持ちはなくならない」とおっしゃっています。でも「こん畜生」と思っている時に、とてもではありませんが、憎しみを消すことはできません。
そういう時、どうするのか。憎しみの気持ちだけで心をいっぱいするのではなく、それ以外のありがたいことに心を向ければいいのだと思います。私は先日、歯が一本、ちょっと痛くなりました。すると人間は面白いものですべてが痛み一色になってしまうのです。「もういやだ。痛い。痛い」とそればかり考えて、すべてがいやになってしまいました。
でも冷静になってよく考えてみると、痛んでいるのは歯一本、それだけです。それ以外は、目もちゃんと見えますし、耳も聞こえます。手も動いていて、足もちゃんと動かせます。歯一本を除けば、体のほかの部分は全部元気なのです。そう気づいたら、急に元気がでてまいりました。
どうしても許せない人がいたとしても、その人に対して「こん畜生」と思うのはしかたがありません。それ以外のところで「ありがたい恩恵を受けている」と思ったほうがいいのです。「歯が痛い。こん畜生、。この歯を何とかしなきゃならん」と思い始めると、全身が痛くなってしまいます。でも、目も健康だし、耳も健康だし、たいがいは健康ではないか。親切にしてくれる人もいるし、今日のお昼ご飯は美味しかったし、お日さまがちゃんと出るのもありがたい。そう思うと、少なくとも全身が痛い、という状態ではなくなります。
腹が立っても、美味しいおまんじゅうを食べて、「ああ、おまんじゅう、美味しいな。ありがたいな」と思う。お風呂に入って「ああ、いいお風呂だな。ありがたいな」と思う。
そちらを増やしていけばいいのです。そして全体の心を豊かにしていけば、だんだん時間がたつにつれて、「憎らしいと思ったあの人のおかげで、これがあるんだな」と思えるようになるでしょう。
憎いと思っている時はなかなかその気持ちを抑えることができません。その場ではけんかになったり、音信不通になってしまったりしてもしかたがないでしょう。
でもしれ以外のところでありがたい思いをしていることもあるし、感謝の心を差し上げる対象でもあるのですから、そちらに気持ちを向けて、ありがたい心をたくさん増やしていけばいいのです。そうすれば、心全体が感謝する気持ちになっていきます。そのほうが、憎しみや怒りに満たされて生きるより、生きやすいのではないでしょうか。
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誰だって腹が立ったり、怒りの感情に溢れてしまう時があります。そんな時は、そのことばかりが頭にこびりついて、「あのやろう!」、「いまに見てろ!」という、醜い感情に心が支配され顔つきまでもが変貌し、いよいよ修羅の道へと進んでいくことになってしまう。これでは、心も体もおかしくなってしまうのは言うまでもありません。
人を指揮する立場にあるリーダーは、このようなマイナスの感情に支配されがちになります。しかし、ここでは、その感情を抑えるのではなく、マイナスの感情をプラスの感情で包み込むということで、自分の感情を平静にしていくということなのでしょう。
自分の心の動揺をいち早く自らが察知して、相手に感謝すること探し、マイナス感情からプラス感情にもっていくことをを意識していかなければ、あっという間にマイナス感情に覆われてしまいます。
「感謝」という言葉をよく聞き使いますが、感謝の行動が伴っていないかもしれません。これは、マイナス感情をコントロールする上で重要な要素だと考えるのです。
だから、いつも「ありがとう!」という言葉を意識して使っていこう。そうすれば、たくさんの恩恵を受けていることに気づき、「ありがたい!」という感謝の心が培われてくるのではないだろうか。そして、その思いが少しずつ恩返しの行動となり、生きやすい人生となっていくと思うのです。