2016年10月27日(木) 771/1000
<ブラック企業>
皆さんおはようございます。
㈱ヤマネット 山田泰壮社長コラムより
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また、痛ましい過労自殺が明らかになった。
「仕事も人生もとてもつらい。今までありがとう」。社宅から飛び降りる直前、母親にこうしたメールを送っていた。
広告大手の電通に勤めていた入社一年目の女性社員=当時(24)=が昨年、クリスマスの日に自ら命を絶った。
労働基準監督署が認定した月の残業時間は、過労死ライン(月八十時間)を大幅に上回る約百五時間に達していた。
遺族側によると「君の残業時間の二十時間は会社にとって無駄」、「髪がボサボサ、目が充血したまま出勤するな」など、上司からパワハラとも取れる発言もあったという。
冒頭から重苦しい文を書いたが、先日の朝刊の社説を引用したものだ。実に痛ましい、親御さんの悲しみや怒りは気持ちは計り知れない。 考えさせられることが沢山ある。私は、過労死ラインなる言葉があるのをこの社説を読んで初めて知って、そんな言葉まであるのかと驚いた。
その昔、稼ぐために、働きに働いた時代があった。人によって千差万別かもしれないが、少なくとも私や私の周りの人達は、そういう人が殆どだった。殆どの人が過労死ラインを超えていたといえる。
ガタガタ云わんと、稼ぎたかったら働け!、と、上司の言葉は厳しかったけど、どこか心があった。怖かったけど、嫌いでもなければ、憎くくもなかった。それどころか、仕事が終わってから一緒に飯を食いに連れて行ってくれるのが嬉しかった。
単刀直入に書こう。
過労死、過労自殺は、過労にあらず、つまり、長い時間働くことが死因ではないということだ。
先の24歳の女性が亡くなった原因は、105時間の残業時間が本質の原因ではないと思うのだ。デリケートな話題なので、慎重に書きます。
私は、決して長労働時間を推奨する者ではないし、実際に自社においても全社員の時短は年々着実進んでいる。ただ云いたいことは、働く時間さえ縮めれば良いという問題ではないということだ。
先の社説において、注目したいのは、過労死ラインとか105時間というところでは実はなく、パワハラともとれる上司の発言のところだ。一所懸命働いてくれている従業員に対しての敬意、労い、励まし、寄り添う気持ち・・・、これらの欠如だ。
甲子園出場を目指している高校球児たちは、授業が始まる前には朝練、放課後は暗くなってもナイター設備のライトでグランドが照らされ遅くまで練習は続く・・・。
そんな大阪にある某高校で、親友の社長が、学校からお声が掛かり、全校生徒の前で講演を行ったそうだ、講演の後の質疑応答の時間、坊主頭で真っ黒に日焼けした野球部の生徒が、運送会社は長時間労働をさせるブラック企業というイメージがあるが実際はどうなのか?
過労死とかの心配はないのか?
という質問に対して、その社長の答えが実に面白い。
早朝から練習、放課後も夜遅くまでナイターで練習、練習、練習、監督やコーチ、先輩からは厳しい指導、時に厳しい言葉も浴びせられるだろう・・・君が所属しているのは、ブラック野球部か?
会場一同は爆笑となったそうな。
如何にも大阪のノリ、おもしろい応答である。
そして、ただ、おもしろいだけではなく、云いえて妙、実に深い。私が聞いた話は、そこまでだったが、この話の続きはきっとこうだ。
以下、ライブ風に私が勝手に再現してみる********
ほなら、君が所属してるのは、ブラック野球部か?
そやけど、この学校の野球部で、過労死した生徒なんてオジサンは聴いたことないでぇ、毎日毎日そんな長い時間、厳しい練習をしているのに、何で、やめへんのか? 監督さんもコーチも一丸となって、時に厳しくも、皆で励まし合い、労い合い、甲子園出場という夢を実現しようとしているからちゃうか?
君も甲子園行きたいやろ?
(行きたい!)
そういうことや、いくら時間が長くて、毎日厳しい練習をしても皆で共有できる夢がある目標がある、そうなりたい!
と、自分自身が心底思えるものがあれば、頑張れる、活き活きできる。そやから、君が所属している野球部はブラック野球部ちゃう、素晴らしい野球部なんや。
会社もそれと同じことなんや。
長い時間働いても社員が活き活き働いている会社もあれば、そこそこしか働いていないにも関わらず社員からの不平不満が飛び交っている会社もある。
社員と経営者が目標、ビジョンを共有できている会社、毎日ただ忙しく、先のことがまるで見えず、一体どこへ向かっているのか分からない会社、励まし合い、労いの声が飛び交っている会社、 不平不満、愚痴、陰口がささやかれている会社、ブラック企業というのは、長時間労働を強いる会社だけをいうのではない、目標、ビジョンがない、お先(未来)真っ暗の会社を正しくブラック企業と云うんや。
勿論、労働時間等、法令は遵守せなあかん、でも、それ以上に大事なことがあるんや。オジサンの会社には、ビジョンがある、こういう会社にしたい! という目標がある。ほんで、社員みんなが元気にワイワイ声を掛け合って、毎日活気があって、ほんま楽しい! そやから、過労死の心配はないんや。
戦後の日本は、国民をあげて働きに働いて、焼け野原から奇跡的な復興を遂げ、世界第二位の経済大国にまでの成長を果たした。これは、他ならぬ、国民が沢山働いたからだ。しかし、今は、それほど働かなくなった、それどころか、沢山働くと国から叱られる時代になった。
いつしか、どこからか、様子が変わってしまった。やがて、中国に追い抜かれ、第二位の座を奪われることになった。(GDPとしては2009年に追い抜かれている)
そりゃ当たり前だわなぁ・・・
週休二日制、週48時間、有給休暇義務化・・・、これらの制度は経済的(物質的)な豊かさに胡坐をかき、楽して儲けよう的な安易な考えから出来たものなのか、これらは、経済に打撃を与えるだけではなく、人間そのものを弱くしてしまいます。加えて、ゆとり教育がその弱体化に拍車を掛けました。
負のスパイラルであります。
国も会社も同じく、スケールの違いこそあれ、つまるところ組織は人間の集合体、その組織の力は、そこに所属する人間の力に他ならない。力をつけ強くなる方法は、負荷をかける以外にない。しかし、ただ一人黙々と負荷をかけるのではない、そこでのキーワードは、先にも述べた叱咤激励、切磋琢磨だ。
共に学び、汗をかき働き、励まし合い、労い合い、声を掛け合うこと、一緒に飯を食うこと、酒を酌み交わすこと・・・
カンパニーという言葉は、「一つのパンを分け合う仲間」が由来だ。貧しくも、しんどくも、共に分け合うこと、たったそれだけで過労死は防止できる。否、たったそれだけ、人間はどんな過酷にも耐え得る能力を潜在的に持っている。
過労死の本質原因は、長時間労働にあるのではない。非難を覚悟のうえで、そう結論付けたい。
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山田社長の考え方に付け加えるとすれば、人間が弱くなっているということじゃないだろうか。やはり、幼少期頃の学校教育に問題があるのだと思うのです。
先祖、両親、兄弟、感謝、命、義、徳、愛、伝統、文化、歴史、道徳、など思い当たる言葉を並べてみたが、いずれも現代においても大切なことだと考えられているが、今は薄っぺらくて、厚みも深みもない、というのが戦後教育であるという方が多くいらっしゃいます。
戦後教育においては、そのようなものは不必要でテストの点数のみが人間の評価ということを長い間やってきたようなのです。
松下幸之助さんは「学校教育の半分は、道徳教育に充てるべきだ」と述べておられ、100年後の日本を心配しておられました。
自分という命は、両親から命を授かりました。そればかりではなく、ご先祖様から日本という精神を受け継いだのです。だから命は大切であり精一杯に生き抜くことがご恩に報いることです。そういった精神的支柱となることを教えていかなければ、人間は弱くなっていくと思うのだと思うのです。
江戸時代は、読み書き、道徳、論語までも熱心に教育していた。明治時代に入り教育勅語が発布され、日本民族は世界に誇る道徳国家の精神的バックボーンとなってきたわけです。
人間一人ひとり、きれいな心をもっています。それが長い間の曲がった教育や荒んだ社会の中で欲望に覆われ、本来の自分を見失っているのです。
ブラックは、企業ではなく自分自身の曇った心ともいえるのではないでしょうか。