2016年6月1日(水) 623/1000
<心の声>
皆さんおはようございます。
致知6月号(致知出版社)より引用
「人生を照らす言葉」 その1
国際コミュニオン学会 名誉会長 鈴木秀子氏
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贋物(がんぶつ:偽物)と聞いて、いつも思い出す評論家・小林秀雄の話があります。 小林はある時、日本橋の古美術店で目にした茶碗がいたく気に入り、すぐにそれを買いもとめました。ところが、数日後、その店の主人が小林の自宅に飛び込んできて平謝りに謝っていうには、「誠に申し訳ございません。あの茶碗は贋物でした。すぐにお代はお返しし、茶碗は引き取らせていただきます」
しかし、小林はどうしても、その茶碗のことが忘れられず、返した茶碗を「贋物でも構わないから」買いとるというのです。 さらにしばらくして、店主は再び自宅を訪れ、その茶碗が実は本物であることがわかったと伝えました。すると小林は、「本物であろうがなかろうが、自分にとって、”これはよい”と確信を持って生きていければそれでいいのではないか。そうすれば、新たな場面でもまた別の確信が生まれる。それが人生を導いてくれるのだ」と答えたのです。
周囲の噂や批判に振り回されることなく、自分の信念に従って生きることの大切さを、小林のこと逸話は私たちに教えてくれています。信念に従っていきるためには、自分の直観を磨かなくてはいけません。別の言い方をすれば、「心の奥にある魂の声に耳を傾ける」ということです。
私たちの心の中には常に様々な喜怒哀楽の感情が渦巻き、欲が湧き起ります。魂の声は、その表面的な感情や思い、欲にかき消されてしまってなかなか聞こえてはきません。しかし、その魂の声こそが私たちが本心からもとめているものなのです。
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実に人間の心理を説いている内容です。
人間には様々な欲があります。欲があるから成長し生きていくことができるとも言えます。しかし、欲に支配され、我欲だけに生きることになれば、心は暗黒となり、一人ひとりがもっている「良い心」が覆い隠されて、暗黒の姿が正しい自分であると思い込んでしまう。
暗黒に支配されないためには、常に自分の心の状況を観察することではないだろうか。「今、自分はわがままではないのか」、「今、自分は、上から目線ではないのか」、「今、自分は心が正常であるのか」という具合である。しかし、己の暗黒と向き合うのは、とても辛いことでもあります。人間だれしも善と悪が存在し、理性や良心によって自己コントロールしているが、我欲の力が上回るとコントロール不能となり、場合によっては暴走を始めてしまう。
そのために、人間力を磨き、己に覆いかぶさっている鎧を外し、心の声に耳を傾けるように意識することが大切であるように思うのです。その繰り返しの中で、直観やひらめきという心の声が聞こえてくるのではないだろうか。