2015年11月2日(月) 411/1000
<存在の承認>
皆さんおはようございます。
致知11月号
「子供たちに伝えたい日本人の心」 対談 その4
東洋思想家 境野勝悟氏
ことほぎ代表 白駒妃登美氏
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(白駒)
日本と海外のいろいろな絆の話をしてほしい」と言われて、よく取り上げるのが「エルトゥールル号の恩返し」の話です。
明治時代、トルコの軍艦・エルトゥールル号が日本から帰途、紀伊半島の沖で座礁した時、ほとんどの乗務員が亡くなるのですが、紀伊大島という和歌山の半農半漁の貧しい村の人たちが一所懸命に介抱し69名の方が助かるんですね。この69名が日本の船でトルコに帰る時、「このご恩は子々孫々に語り継ぎます」と言って、本当にそれを伝えていかれる。
それから100年近く経過した1995年、中東でイラン・イラク戦争が勃発します。この時、イランの首都テヘランに多くの日本人が取り残された状態で、イラクの大統領だったフセインは、「これから48時間後、イラン上空を飛ぶすべての飛行機を撃ち落す」という声明を出したんです。
与えられた時間は48時間。この間に何としても救出しないといけない。しかし、打開策がないまま時間だけが過ぎていってしまう。
万策尽きたかのように見えたその時、テヘランに駐在していた日本の大使が、ただ個人的に親しくしているという理由でトルコの大使館に電話をかけ、「テヘランの日本人を助けてほしい」と頼むんですね。
トルコの大使がそれを本国に伝えたところ、すぐにOKの返事があり、その場にいたトルコ航空のパイロット全員がその危険なフライトに自ら志願したのです。
2機のトルコ航空機が2百数十名の日本人を乗せてテヘランを出発し、イランからトルコ領空に入ったのが、タイムリミット寸前でした。「助かった」と手を取り合って喜びながら、救出された人々はふと「なぜトルコ航空機が自分たちを助けにきてくれたのだろうか」と考えるんです。乗務員にそのことを質問すると、皆が声を揃えて言うには、「エルトゥールル号の恩返しです」と。
その後、トルコ地震の時に日本政府は大がかりな人道支援をするのですが、これはテヘランから救出された日本人が政府に支援を働きかけたことで実現したものです。
2020年のオリンピックはイスタンブールと東京が争って東京に決まりました。
すると、トルコのエルドアン首相は真っ先に安倍首相のものに駆け寄り、祝福の抱擁をしています。歴史を知ることで、そういうシーンが何倍も感動で伝わってくるんですね。
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世界で起きている戦争になんともいたたまれない思いになる。シリアでは子供たちが鉄砲を持って、戦争に加わっている姿を見ると言葉を失う。憎しみは憎しみを生み、その先にあるものは互いの破滅しかない。いったい私たちはどうすればいいのだろうか。
「エルトゥールル号の恩返し」のように命を助けてもらったことは子々孫々と語り継がれるほどの感謝の念に耐えない出来事となる。やはり、自分が当たり前なことだと思っていても、相手にとっては凄く感激することだってある。人は感動する。そこに絆が生まれるのではないだろうか。
多くの人がいて、多くの考え方、感情が存在する。誰が正しくて、間違っているかということよりも、「あんたの考えは好きじゃないけど、あんたがいてくれることが嬉しいんだよ!」という存在への承認。
自分の都合のよい人、考えと合う人以外は認めないとすれば、殺伐とした世界となってしまう。お互いがお互いを尊重し、よい人間関係を築いていくための第一歩が「存在の承認」と考えるのです。
会社には上司と部下の関係はあるが立場や役割が違うだけのことでお互い人間同士である。なんら違いはない。エルトゥールル号の乗組員を救出した農民の人間として正しい行動をしたことと同じように、互いを承認し立場、役割を超えた正しい行動をすれば強固な組織がつくられ、念いは実現すると考えるのです。
それが60周年を迎えることができた入出運送という会社を継承してくださった多くの方々へのご恩返しだと思うのです。