2015年5月13日(水) 238/365
<遠くをはかる>
皆さんおはようございます。
二宮金次郎の幸福論」より抜粋 その10
二宮金次郎 七代目子孫 中桐万里子氏
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もし、いま目の前に、高い大空へとそびえ立つ立派な一本の松の樹があるとして、「この樹をよくみたら何が見えますか?」と問われたら皆さんはどう答えますか?
例えば、「樹齢は○年くらい」「○メートルくらいの高さだ」「品種は○かな」といった答えがでてくるかもしれません。
ところが金次郎は言うのです。
「いやいや! それはよく見ているのではなく、ただ見ているだけだ」と。
しかし、専門家でもない人間に、一体それ以上の何を期待しているのでしょうか。
実は「よくみる」ことは、幼い子供にでもできることなのです。
この松が、ある時、突然このカタチでここに置かれたものではないことは誰もが知っています。
どんな松でも、必ず始まりは小さな小さな苗です。この苗に、たくさんの人びとの想いが注がれ、手間ひまが加えられることで、ゆっくりとこの姿になってきたのです。
「よくみる」すなわち「遠くをはかる」とは、今ここにたどりついたプロセスを見る事です。そのものがその姿になるまでの過程には、必ず多くの深いドラマがあります。そして、必ず多くの大切な味方たちの尽力があります。それなくして、物も人も存在することはあり得ないということです。
今は目に見えないけれど、確かにその存在に息づいているプロセスを、過去を、歴史を、ロマンを、かけがえのないドラマを見るからこそ、そんな過去や未来をはらむものとして、「現在」が奥行をもって見えてくる。そのことを「遠くをはかる」と呼んでいたのではないでしょか。
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入出運送は今年60年を迎える。人で言えば還暦である。
創業当初は、湖西市入出から始まった。当然私は知る由もない。
二代目社長(現会長)が引き継いだ時には、従業員10名、トラック9台であった。
それから40年が経過し、現在は従業員178名、トラック82台となり、立派な物流センターがある。
60年という長い年月の中で多くの人の尽力があり成長し続けた結果である。
今だけを見れば、それは大きな松を見ているに過ぎない。
諸先輩方は多くの挫折、困難、苦難があったと思います。しかし、そのことと向き合い、それでも乗り越えるための道を探って、一歩踏み込み続けて来てくれたからこそ、今、私達が継承して存在をしているのです。その力と知恵と勇気が、働く一人ひとりに注がれていることを感じなければならいと思うのです。
ここ数年に入社した従業員が多い。
その従業員に会社の歴史を伝えることは、諸先輩方へ敬意を表することであり、働く人の働き方も変わってくるのではないでしょうか。
一人の人間も同じです。その人の過去の生き様を知ることで、その人の見方も変わるし、何か親近感を感じるものと考えるのです。
「遠くをはかる」とは、会社も人も同じなのでしょう。