2018年7月14日(土) 1013回目
<自分のために働くこととは>
繁栄の法則(新世書房)より抜粋 その3
丸山竹秋氏著
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本田技研社長の本田宗一郎氏が社員に対して、「会社のために働くな、自分のために働け」と訓示をしたという話のことである。
人のためとか、会社のためとか、そのような高尚なことは考えないでよろしい。自分のためにせっせと働く、それでよいのだ。という考えである。
「まったく素晴らしい思想だ。これだから我々は働く気になれる」という社員。事実その通りであろう。だが、ここではっきりと知っておかなければならない大事なことがある。
氏の趣旨は、「従業員諸君! 諸君は会社のために働こうなどと考えなくてもよい。自分自身のために働けばよい」
というのだが、それは社長が言っている、ということである。もしこれを社長が次のように言い換えたらどうなる。
「わしは自分自身のためにだけ働く。従業員の繁栄などちっとも考えたことはない。会社のためなど思ったこともない。諸君はいいようになったらいいのだ」
少し極端な表現かもしれないが、もし本田社長がこう言ったとしたら、どうなるだろう?
「なんだ、あの社長は。ずるい男だ」
「こんな冷淡な、利己的な人のもとでは、とうてい働く気にはなれない」
おそらく大部分の従業員は、こう思うに違いない。社長が、社長自身のことはとにかくとして、従業員に対して「自分のために働きなさい」と激励しているところに大切なポイントがあるのである。
「あなた自身のためにやってくれ」と、従業員のためを思って社長が言っている。そこをしっかりと見つめなければ無意味なのだ。
赤井電機の赤井三郎社長も、新入社員が入ってくると、「会社のために尽くそうと思ったり、また道楽で入ってきたような人があったらすぐに帰ってもらいたい。命がけで一財産つくろうとか、女房子供を養おう、立身出世をしようという人だけ残ってもらいたい」 と訓示をしたそうである。これもやはり同じように、社長が社員のために言っているというところをはっきりと聞き分けなければなるまい。
「おれは自分のために働く。会社のことなんかどうでもよい。だからお得意さんのことも、製品のことも、考える必要はない。自分勝手にやればいいのだ」
という考えで、めいめいが仕事をしたらどうなるだろう。すぐに製品は売れなくなり、会社は倒れてしまうに違いない。これでは自分のためにならないのである。
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働くということは、最終的には、自分のためである。自分のためだからこそ頑張れる。でもよくよく考えると、お客様に喜んでいただけるような仕事をしなければ、仕事は無くなり、自分に何も帰ってこないのである。
結局の所、自分のためだけ。つまり、自分以外のことはどうでもよいという仕事では、自分は豊かになれないばかりでなく、組織は衰退し、会社が倒れる顛末となり、自分のためにならないという結果を招く。
ならば、自分のためになるということは、自分以外の人に喜んでいただく仕事をする以外に方法はないのであると考えるのです。